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有機栽培普及と品質重視の両立のあり方を探る

ドキュメント内 R[q[̎ЉȊwÍ@|ʂėL@R[q[͎sgł̂H| (ページ 75-78)

第 3 章  コーヒーの有機栽培

3.9   有機栽培普及と品質重視の両立のあり方を探る

ないが、実は有機栽培で作られている36。このことを知っている消費者はどれだけいるのだ ろうか。うまいというだけでコーヒーは売れる。有機を表示することは、認証の手間をか けて「消費者が得る満足」を売っているということになる。現状において確実に有機コー ヒーを手に入れるためには、スーパーなどで認証マークが大きくついているそれほどおい しくない上に高いコーヒーに甘んじるしかないか、有機表示をしていない自家焙煎業者な どに直接確認するか、インターネットなどを使って自分で業者を捜し当てて、通信販売で 購入するしかないようである。

また、日本人はとりわけ「ブランドイメージ」にこだわる。例えばモカマタリはもはや うまいコーヒーではなくなってきているのにもかかわらず売れる37。ブルーマウンテンは確 かにうまいが、同じくらいうまいコーヒーは他にもたくさんあるにもかかわらず、ブルー マウンテンだけを買おうとする38。消費者は何気なく大手のブランドや豆のブランドで買っ ているのである。この点にも有機コーヒーは立ち向かわねばならない。

宇都宮市内の自家焙煎店へのインタビューによれば、よく売れるのは圧倒的に名前が知 られた有名な産地の豆であるという。そして、おいしい豆が限定品として入荷した場合で あっても、「○○マウンテン」などと銘打ったものが、そうでないものに比べ、圧倒的に売 り上げが違うという。味がそれに相関しているわけではなく、むしろ味はそうした名前が ついてないほうが良い場合もある。いかにネーミングが重要かを示す事例であろう。

筆者が行ったアンケート調査によれば、ブランドで選ぶという人が人中55人中5人いた。

豆の種類・産地で選ぶ人も 7 人いた。消費者は選択をする時、価格はもちろんであるが、

潜在的であれ産地をイメージしているといえるのではないか。味を知る前段階では一層そ うであるといえる。現時点で有機はブランド化しているのかもしれないが、多数が受容す るブランドで果たしてあるのだろうか。メキシコやペルーなどマイナーな生産国が主な有 機コーヒーの産地である現状で、有機コーヒーはよりブランドイメージを高める必要があ るのではないか。その確立に寄与するのがやはり味だと思うのである。

業者へのアンケートの回答から、品質を最重要視したコーヒーと有機コーヒーとの間に、

今後期待の持てる関係を見出すことができた。

価格が低迷して、協定による制約もなくなった中で、コーヒー栽培農家はまずしっかり としたマーケティングで高価で買い取る顧客に安定供給を行おうとする。味に納得して契 約した場合には、有機栽培をしていた農家がわざわざお金をかけてまでJAS認証を取得す る必要はないのである39。高品質の栽培農家にはいわゆる得意の取引先があるのが常であり、

JAS 認証を得る場合は、日本側の有機へのこだわりがあるところからの依頼や主導がある 場合であると思われる。

 一方、消費国の味を重視した業者が、品質の良いものを確実に仕入れるために、生産地 の農業試験場、輸出業者、農協などあらゆる努力でカップテストをしてよいものを生産し ている農園を割り出し、人間性を通して、時間をかけて品種、農法・加工法、精製方法、

輸出方法などの買い手側の提案に答えてもらうということをしているという。そして、自 分たちが農園を買って農協の会員になり、情報収集をしているという。しかも、内戦状態 であろうと、武装地域であろうと、安全を確保して現地に出向くそうである。よいコーヒ ーを手に入れるためには何より人間関係が大切だという40

この熱意からは単なる商業主義は感じられず、有機栽培を奨励するフェアトレードと同 様に熱意が感じられる。おいしい種の木は病気に弱く、隔年収穫型で表作と裏作の差が大 きい。したがって高く買い付け、長く取引をするということを保証し、リスクを分かち合 わなければ、おいしいコーヒー、種を栽培して欲しいとはいえないのである。また、良い コーヒーを生産しようと思っている農園主は、たとえ認証を得ていなくても、農園の生態 系などに気を使って、地力を保ちつつ健全な農法を行っているという41

 生産性を重視し、土壌の状態よりも国際の相場に敏感に反応して売れるところに大量に 売るというスタンスをとる生産者と、確実に一定の量を、安定した高価格で買取する買い 取り業者と提携する生産者とでは、有機コーヒーの生産のしやすさが大きく違う。生産性 を第一におかなければ、有機栽培でコーヒーを栽培することは、野菜などと違って非常な 困難を伴うものではない。これらのことから、買い取る側が生産性ではなく味を優先し、

買い取りを保証してある程度高額で買い取るのであれば、その結果として必然的に有機栽 培で、あるいはそれに近い形によって栽培され、それが残っていくということになると結 論付けられる。

残りの課題はそういった業者とうまく出会って提携できるのか、うまいコーヒーを生産 する技術を特に小農がどう獲得するのか、そして味を重視する消費者をいかにして増やす かである。はじめの 2 つはまず生産者が、小さい形であれ生産者組合などで独立している

39 当段落、業者へのアンケートの回答より。

40 同上。

41 同上。

必要がある42。その独立と技術援助の段階は、外部からの支援が必要になるだろう。この段 階はコーヒー業者が入っていくということは難しいように思われる。これはフェアトレー ド企業、団体に限らず、ODAなど政府系のものでもよいし、NGOでもよいだろう。

次に味を重視する消費者開拓であるが、これは先述の「国連グルメコーヒープロジェク ト」などが試みられてはいるものの、十分な認知と新規開拓には至っていないようである。

コーヒーのアンケートにおいて、飲んだコーヒーの感想として、「インスタントとは違う」、

「普通はブラックでは飲めないのに、抵抗なくブラックで飲めた」などと、その味に感激 する意見が少なからずあった。今回は比較的高品質のコーヒーを扱ったので、この結果は 新たに高品質のコーヒーを求める消費者が少なくないことを示しているのではなかろうか。

試飲を含め、宣伝の仕方によっては大きな市場拡大の芽があると感じる。有機コーヒーの 普及にはまだまだ改善の余地があり、今後の工夫次第で十分に伸びる分野であろう。

 本章では有機栽培をコーヒーに適用した場合を考え、その栽培の実際、認証制度、フェ アトレードとの関連性、有機コーヒーの実際の消費者と業者の評価と追っていき、最後に 有機コーヒーが市場でシェアを広げる上での問題点と解決となる 1 つの方法を示した。有 機コーヒーの存在意義は他の農産物で中心となっている味の良さや健康面でのメリットな どがなく、もっぱら環境面でのメリットしかないということが明らかになった。しかし、

消費者が求めているものは味や低価格である。このすれ違いは有機コーヒーの今後の市場 拡大への大きな壁となるだろう。

 消費者の環境意識ははじめにで述べたように、概して高い。そこで、味や健康でなく環 境面での満足しか消費者のメリットがないならば、有機コーヒーの市場を拡大させる上で 少しでもその環境面の付加価値を高めたい。その環境面の付加価値を高める手段の一つと して日陰栽培がある。次章においてこの日陰栽培に焦点をあて、その有用性を深く検討す ることにする。

42 小農は生産者組合を組織していないと正確なマーケティングをすることは難しい。この段階はNGO どの力を借りる必要があるだろう。

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